嗅ぐ家具

 こんにちは。工事士の方の坂本です。

 電気工事の仕事にはやりがいがあり、時に責任重大で、時に危険で、時に悩まされ、言葉は軽いかも知れませんが、楽しむ要素が尽きません。しかし太陽光発電所の建設に伴い、チェーンソーで木を切り、ユンボで穴を掘れば、普段は味わえない経験となり、視野を広げることの大切さを知りました。

 さんふらわーの新事務所建設もまた、貴重な体験による衝撃の宝庫でした。もちろん僕なんかはただのお手伝いという立場でしたが、ログ材が組上がっていく光景には圧倒されっぱなしでした。

 そして屋根材や太陽光パネルの設置が終わり、内装の段階に入った時です。普段の電気工事の合間に、僕は大工さんのお手伝いをさせてもらいました。新事務所はログハウスなので、天井も床も板張りです。それはパイン材の板をひたすら打ち付けていく仕事でした。

 出会いはいつも唐突です。初めて『波乗りジョニー』を聴いた時、僕は涙を流しましたが、あの感動によく似た衝撃が再来したのです。さすがに涙は出ませんでした。しかし人生の先輩方が示してくれる指針のようなものを目の当たりにした感覚は、きっと『波乗りジョニー』とほとんど同じでした。

 僕は丸のこを買い直しました。そしてその他の細かい大工道具もいくつか手に入れ、木材いじりを始めました。電気工事の方だってまだまだ半人前ですが、おそらく僕にもあるはずの伸びしろを、更に広げてみようというのはあくまでも木をいじる為の名目。確かに建物の構造を考える機会にもなるのですが、木材で机や棚を作ることがとにかく楽しくて仕方がないのです。

 自分の部屋も板張りにしました。仕上がりはともかく、そこでぼんやりと木の匂いに包まれていると落ち着きます。あと単純に丸のこなどで加工している時に舞う木くずだっていい匂いがします。そういえば女房との出会いも『匂い』からだったような気がします。僕にとって匂いは何かと重要な要素なのかも知れません。

 それで今はカウンターテーブルを作っているのですが、実はこのカウンターテーブル、一応お客様にお渡しする為のものです。もちろんお金はいただけませんが、この作業がうまくいくかどうかで、案外ほんの一年後さえ変わってくるような気がしています。